鼻粘膜のⅠ型アレルギー性疾患で発作性反復性くしゃみ、(水様性)、鼻漏、鼻閉を3腫脹とします。ハウスダスト・ダニをアレルゲンとする通年性アレルギー性鼻炎、一般的に「花粉症」と呼ばれるスギ・ヒノキ・ブタクサなどの花粉をアレルゲンとする季節性アレルギー性鼻炎があります。
アレルギー性鼻炎は他のアレルギー疾患と同様に世界的に増加、また低年齢化が進んでいます。
日本人の4人に1人はアレルギー性鼻炎
ダニアレルギー性鼻炎の治療は大きく4つに分けられます①抗原回避と除去、②薬物療法、③アレルゲン免疫療法(皮下免疫療法、舌下免疫療法)、④手術療法重症度、病型(くしゃみ・鼻漏型、鼻閉型または鼻閉を主とする充全型)、年齢、合併症の有無により治療方法を個別に選択する必要があります。
今回は、一部ではありますが根治の可能性も期待出来るアレルゲン免疫療法の舌下免疫療法の話をしたいと思います。
Q1.アレルゲン舌下免疫療法って?
A.アレルギー免疫療法とはアレルギー疾患の病因となるアレルゲンを少ない量から徐々に増量していくことによりアレルゲンに暴露された場合に引き起こされる関連症状を緩和する治療法です。
日本では1960年代から注射による「皮下免疫療法」が行われれていましたが頻回の通院、注射による疼痛、アナフィラキシーを含む副作用(副反応のほうが良いのでは?)といった理由で施行できる施設は限られていました。
その皮下免疫療法の欠点を改善した新しい治療法として治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場し、自宅で服用できるようになりました。
2014年にスギ花粉症で初めて保険適応となり、さらに、ダニのアレルギー性鼻炎も2015年に保険適応となっています。また2018年からはスギ・ダニともに12歳以下の小児でも投与可能となっています。(年齢制限はないが5歳以下での使用経験はなし)
Q2.だれでも治療できるの?
A.基本的には5歳以上でスギ花粉症、ダニによるアレルギー性鼻炎の患者さんで免疫療法を希望する患者さんです。血清特異的IgE抗体検査や皮膚反応テストによる病因アレルゲンの特定が必要です。
しかし、次にあてはまる患者さんは残念ながら適応外となります。
・重症およびコントロール困難な気管支喘息合併症
・重症の口腔アレルギー・抜歯後などの口腔内の術後、傷や炎症などがある方
・妊娠中の方
・重症な心疾患・肺疾患をお持ちの方
・ステロイドや抗がん剤、β阻害薬使用など特定の薬を使用されている方
Q3.どれくらいの治療の期間と頻度は?
A.少なくとも1-2年は継続が必要で3年以上が推奨されています。3年以上行うと治療終了後も数年効果が持続することが分かっています。また、同時に2年間の継続では効果が持続しないことも分かっています。
毎日1日1回舌の下側に薬剤を投与します。1-2週間の増量期を経て維持期に入ります。
舌下免疫療法は即効性の期待出来る治療ではありません。また長期に治療をしても効果が十分に得られない患者さんも存在します。
Q4.開始の時期は?
A.スギ花粉に対しては出来ればスギ花粉の飛んでいない11月以前からの投与が望ましい。またダニはいつからでも投与開始可能です。
(解説)スギ花粉症に対する治療関してはスギ花粉飛散時期には免疫応答が亢進しており、副作用の危険性が高まるため投与開始出来ません。
ヒノキ花粉はスギ花粉と共通抗原を有するのでヒノキ花粉の飛散が終了するまでは開始しない方がよいでしょう。ダニに関してはいつからでも開始で出来ますが、スギ花粉症も併発している患者さんは先述同様にスギ・ヒノキ花粉飛散時期(1月~5月)は避けたほうがよいでしょう。
Q5.副反応(副作用)は?
A.主な副反応としては舌の下側に投与しますので口腔内・口唇の浮腫、かゆみ、痛みなどがあります。また稀ですがアナフィラキシーとよばれる強いアレルギー反応を起こす可能性があります。皮下免疫療法と比較すると可能性は低いとされています。
始めての投与は医師の監督下で医療機関で行う必要があります。問題なければ2回目からは自宅で投与可能です。副反応の反応(出現のほうが良いのでは?)を避けるため舌下投与後5分間はうがいや飲食を避ける、投与後2時間はアルコール摂取や激しい運動や入浴などは避ける必要があります。
Q6.どこで治療出るの?
A.舌下免疫療法に対してのお薬は講義・試験を受けた医師のみ処方可能なお薬です。かかりつけ医師・薬剤師に相談してみてください。また製薬会社のHPより検索できます。
Q7.効果は?
A.国内で行なわれたスギ花粉症とダニのアレルギー性鼻炎での臨床試験では、プラセボ(薬の成分のはいっていない偽薬)より有意に効果的でした。抗ヒスタミン薬の内服やステロイド点鼻薬と同等かそれ以上という報告も多数あります。
使用開始早期に効果が発現するわけではなく根気のいる治療法であり、残念ながらすべての人に効果が発現するわけありませんが免疫療法単独でも十分満足する治療といえます。
ダニに対する舌下免疫療法は純粋に症状を抑えるのみではなく新規抗原感作抑制や気管支喘息の発症予防も期待されている。